樒(しきみ)と榊(さかき)

昨日は、当院の春彼岸会法要。ご門徒さん・寺族あわせて14名でお参りしました。
法要の後は、お楽しみの御斎(おとぎ)。今年は三友居さんに仕出しをお願いしました。菜の花や木の芽がふんだんに使われていて、春を感じるおいしいお料理に会話が弾みました。

護持会の事業報告・事業計画からはじまって、住職の宗務総長再選や、副住職の向鶴文化連の活動報告、旧門徒詰所の有効活用策の検討状況など、今回は話題に事欠かず、あっという間の2時間でした。

さて、法要では、お仏壇に仏花や樒(しきみ)を供えます。樒は常緑で香りもよく、その花は極楽浄土だけに咲く青蓮華の花に似ているため、ご仏前に供えるようになったと言われています。ちなみに、青蓮華の花は、普通の蓮の花よりも花弁が長くて、それはそれはとても美しいのだそう。

しかし、仏事で供えられる樒と、神社の神事で用いる榊(さかき)とはどう違うんだろう?少し気になったので調べてみました。

なんとなく同じように思っていましたが、実は、全然違う植物だそうです。

樒:シキミ科シキミ属の常緑高木
榊:ツバキ科サカキ属の常緑小高木

樒の歴史は古く鑑真和尚の時代に中国から伝わったとも、もともと日本に自生していたとも言われています。

樒には、アニサチンという有毒物質が含まれており、その強さはというと、植物としては唯一、「毒物及び劇物取締法」による劇物に指定されているほどだそう。特に、その種子は猛毒で、嘔吐、下痢、痙攣等の中毒症状を起こし、最悪のケースでは死亡に至るといいます。しかし、樒は香りがよく、日持ちもするため、平安時代頃には既に仏事に使用されてきたようです。古くからお香の材料でもあり、まさに「末香臭い」香りがします。また、野生生物はその毒性を恐れて近寄らないため、墓地に植えたり、お棺に入れたりされてきたようです。

一方、榊とは、もともとは神事に用いられる常緑樹の総称だったようですが、次第に全国どこでも育ちやすい榊の樹木を指すようになったようです。そのためか、榊以外の常緑樹を用いる神社もたくさん残っており、愛宕神社では樒を神事に用いるそうです。

法要前日、先々週に供えた古い樒を新しい樒に取り替えようとしたら、緑色の葉っぱの合間に、小さな白い花が。夕暮れ時、薄暗い仏間で、その白い花は、それはそれは清らかに咲き誇っていました。