「生きる喜び」に気づく、お寺での文化体験

私は今まで、主に伝統産業を中心として産業振興のお仕事をさせていただいてきました。多くの中小企業さんや職人さんとご縁をいただき、素材や技術の棚卸しから新商品開発、プロモーションなどを通じ、伝統産業の現代社会における市場価値を高める、ビジネスのお手伝いをしてきました。その一方で、文化分野、いわゆる「作品」や「アート」と呼ばれるもの、例えば、美術や音楽、文学、演劇などは、作家性、趣味嗜好性が強く、公的な支援メニューが限られることもあり、私も意識的に一線を引いてきたところがあります。しかし、同時に、そのことにある種のもどかしさを常々感じていたのも事実です。

身の回りを少し見渡すだけでも、サブカルチャーはともかく、従来の文化、いわゆるハイカルチャー(美術、音楽、文学など)に対する関心が少しずつ薄らいできているような気がしてなりません。かつては社寺仏閣や大企業などがパトロンとなって無名の作家を育て文化を振興してきましたが、近年の企業メセナ活動もまだまだ充分なものとは言えません。家庭からは工芸品が姿を消し、骨董好きのコレクションとなってしまいました。合理主義と経済原理に洗脳された私たちにとって、機能性も資産価値も見い出せないような文化はもはや無用なのでしょうか。もしくは、いったいどんな意味があるというのでしょうか。

私は、文化の価値とは、極論すれば、「生きる喜び」の体感、ではないかと思います。

あなた自身が、その時、そこで、身をもって体感する感動、癒し、希望。ストレスの多い人間関係、将来への不安、予見できない自然災害など、誰しもが経験するどうしようもない現実と向き合うとき、美術や音楽、文学などの文化はその真価を発揮するのです。

そして、これは紛れもなく、お寺が果たすべき役割と重なります。

そこで、「生きる喜び」に気づき、心豊かな人生を過ごすための、文化体験の取り組みをはじめることにしました。先達の篤い信心と不断の努力で守り継がれてきた長性院の有形無形の資産を活用し、京都内外で培われてきた多様で奥深い文化の継承・発展の一助となることで、心豊かな人生の実現と社会の平安に貢献したい。そんな思いで、「向鶴文化連」という取り組みをスタートします。

第一弾のイベントは、京都若手作家展「Power of Gold」。「Design Week Kyoto 2016」にあわせ、京都でご活躍されている新進気鋭の作家による作品展示を予定しています。

http://ikiru.tv/archives/615

とはいっても、限られたスペースに、限られた時間、限られたマンパワー・・・。制約条件ばかりですが、共感いただける皆様のお知恵とお力をお借りし、京都の片隅の小さなお寺から、「生きる喜び」を発信していきたいと思っていますので、どうかご支援ご協力よろしくお願いいたします。