夜10時、祇園祭が地元のお祭りに変わる

7月、佛光寺や長性院のある下京は、祇園祭一色に染まります。今年は日程に恵まれたこともあり、土曜日の宵山には30万人以上が訪れたそうです。一方で、地下鉄で数駅ほど北に行った上京は、まるで何もなかったような静けさ。日本三大祭、そして世界無形文化遺産として抜群の知名度と観光集客力を有する一方、下京の住民に愛される地元のお祭りでもあります。

窓を開けていると、夜風に乗って佛光寺界隈まで、祇園囃子が聞こえてきて、思わず心が浮き立ってしまいます。ということで、夜遅くから、今年も宵山に繰り出すことにしました。

向かったのは、佛光寺からもほど近い「松原通り」。松原通りには山鉾もなく、道幅5~6メートルほどの狭い道は、ひっそりと静まり返っています。

午後10時過ぎ。観光客が徐々に帰路につくなか、12の山鉾町から「日和神楽」が出発します。「日和神楽」とは、翌日の山鉾巡行の無事を祈り、お旅所に参る行事。四条寺町のお旅所(長刀鉾は八坂神社)まで、太鼓や鉦を積んだ屋台を引き、お囃子を演奏しながら、1~2時間かけて街中を練り歩きます。

しばらくすると、遠くから祇園囃子の音色が近づいてきました。豊臣秀吉が京の街を改造するまで五条通りと呼ばれた松原通りは、八坂神社と伏見稲荷大社の氏子地域の境界にあたり、多くの日和神楽が通ります。私も、到着を待ち構える住民たちに混ざって、静かで情緒深い”地元の”お祭りを堪能してきました。

さて、17日は山鉾巡行、神輿渡御・神幸祭。そして24日の還幸祭では、まさに佛光寺の横をお神輿が通ります。古地図を見ると、このあたりは昔、八坂神社の敷地だったようで、祇園祭と所縁の深いのもわかります。が、その話しはまた次の機会に。

(副住職)