それしかないわけないでしょう。とインターネット

まだ、娘が小学校に入って間もなかった頃の話。

私「宿題をしなさい!」「野菜を食べなさい!」
娘「それしかないわけないでしょう」
私「・・・」

ヨシタケシンスケさん。娘が愛読する絵本作家。そのコレクションの中の一冊に『それしかないわけないでしょう』があります。

あらすじといえば、小学生のお兄ちゃんから「僕たちが大人になる頃には、天変地異が起きて、食べ物はなくなるし、病気と戦争が蔓延して、怖いことばかりだよ」と言われた妹が泣きついたおばあちゃんが発した一言。「それしかないわけないでしょう。」

とてもコミカルに描かれた子供向け絵本なのですが、その一言が脳裏に焼き付いてはなれず、私の必読書になってしまいました。

こんな話があります。マッチ売りの少女の話を聞くと、誰しもかわいそうに思うでしょう。しかし、その少女が、その売上で宝石を買っているのを見たら、かわいそうに思うでしょうか。でもその後、その宝石が、死期に瀕した母への最期のプレゼントだと知ったら、どう感じるでしようか。

私達は、いつもものごとをに都合よく見てしまいます。残念ながら、いくら客観的に冷静に見ようとしても、色眼鏡を通してしか見ることができません。また、私達の視野や判断には限界もあります。

今や私たちの生活に欠かすことのできないインターネットは、誰もが自由に発信できて、知りたい情報もすぐに入手できる、多様性に満ちた世界だと期待されてきました。しかし、進化し続けるテクノロジーは、いまや、無限に増え続ける情報の中から、ひとりひとりの好みにあった情報を巧みに選び出し、まるで「それしかないように」私達の前に表示するようになりました。目の前に広がっているのは、多様性とは無縁の、極めて偏った世界になっていないでしょうか。

だから、時には、「それしかないわけないでしょう」と、想像力を働かせてみる。でも、頭が固くなった大人にはなかなか難しいでしょうから、まずは、間違っているか、偏っているか、自分で判断せず、「それしかないわけないでしょう」とあらゆる人・物・情報に触れてみる。一度は、素直に受け入れてみる。それが、私たちが、のびのびと生きるための第一歩のような気がします。