年頭のご挨拶

もらさじと 呼べる誓いの
み名にあいて
聴きひらかなむ
わがともびとよ

謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

冒頭の歌は、昨年十一月十二日御遷化されました恵照前御門主がお得度に当たりお念仏とともに生きる決意を詠われたものです。

恵照(渋谷笑子)様は、戦後間もない昭和二十三年、第二十九代真照上人と結婚され、本山にお入りになりました。九十五才でお亡くなりになるまでの七十余年、お裏方として、母として、門主として佛光寺をお守りいただきました。

取り分け真照上人の御遷化後、門主後継が二度も行われる事態となりました。そこで、自ら門主となり、親鸞聖人七五〇回大遠忌法要を厳修し、平成三十年には第三十三代真覚門主へと引き継がれたのであります。

苦難の時代にあって、恵照様は常々、「全ては阿弥陀様のおはからい」と口癖のように話されていました。お念仏に導かれ、いただいた生命を全うし、お浄土へお還りになりました。

さて、昨年を振り返りますと予期せぬコロナウイルス感染症の拡大と自然災害に明け暮れた一年でした。

集中豪雨によって被災されたご寺院様には、一日も早い復興を念じております。また、ご支援いただきました宗門の皆様に心より感謝申し上げます。

一方、コロナウイルス感染症の世界的な拡大は、政治、経済、社会、文化、生活様式、更に私達の心にも大きな影響をもたらしました。

見えないものへの恐怖心が苦悩となり、苦悩から逃れるため自分を正当化し、これがこうじると差別へと繋がります。収束の目途が立たない今日、不安に満ちた日々の中で感染された方や医療関係者への心ない差別が起こっていることは誠に残念なことです。

本山におきましては、恒例法要や茶所布教については、感染対策を講じながら粛々と実施しておりますが、春法要と御正忌報恩講は、団体参拝を中止し厳修することを余儀なくされました。その他の行事については、やむなく中止せざるを得ないもの以外はオンラインの併用など可能な限り開催に努めております。

さて、昨年の御正忌報恩講の御親教で真覚ご門主は、

無慚無愧のこの身にて
まことのこころはなけれども
弥陀の回向の御名なれば
功徳は十方にみちたまう

をお引きになり、罪を犯し、人を傷つけている我が身を恥じることのない私たちにも、阿弥陀如来のお念仏の功徳がはたらいています。生死を超える道は本願のお念仏を聞かせていただくことしかありません、とお示しいただきました。

私たちは、このみ教えを守り、苦難を乗り越えてこられた先人にならい、念仏の日々を過ごして参りましょう。

長性院 住職 佐々木 亮一