どくだみ -お寺とお薬-

当院の庭に繁る「どくだみ」。先週からとうとう、かわいらしい白い花を咲かせるようになりました。このまま放置しておいては、庭がどくだみ畑になってしまう・・。やむにやまれず、今日、除草することに。どくだみは、強力な地下茎を張り巡らせ、繁殖します。鍬で地面を掘り起こすと、出てくるは、出てくるは。太い地下茎が、地上の何倍も出てきました。

うるおぼえですが、昔、境内で薬草を育てていたため、今でもどくだみがあちこちに生えてくると聞いた記憶があります。確かに、どくだみは十薬とよばれるほど優れた薬草。ことの真偽は不明ですが、古来、仏教寺院とお薬とは切っても切り離せない関係があります。

歴史的には、大和時代、仏教とほぼ同時に、漢方が日本にもたらされたようです。それ以前にも、薬のようなものはありましたが、呪術での使用を前提とするもので、宗教的・神秘的な色彩の濃いものでした。聖徳太子は、お薬の重要性にいち早く気づいたようで、現に聖徳太子が建立した法隆寺には、衆生の疾病を治癒し寿命を延ばす仏として、薬師如来が祀られています。

その後、唐から膨大な数の生薬をもたらした鑑真和尚、お茶を持ち帰った栄西禅師をはじめ、僧侶が医薬の普及・発展に大きな役割を担うようになります。医学・薬学の習得と実践が修行の一環とされたこともあり、寺院でお薬が作られ日本全国にもたらされていきました。高野山で生まれた「陀羅尼助」など、江戸時代に一般庶民に普及し、未だに製造・販売されているお薬もあります。

寺院が目指してきたのは、目の前で病に苦しむ人々を救うための、実践の薬学。古来から伝わる迷信や根拠のない言い伝えの排除。そのために、薬草を大切に育て、科学的な研究を重ねてきたのでしょう。

仏教とは、決して理想論でも精神論でもない。
なんか少し勇気をもらった気がします。

今度、自家製どくだみ茶、作ってみようかな。