君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪はふりつつ

2月12日。前々日から降り続いた雪がまだ地面に残る。「春の七草」を探しに、ひとり京都・大原に向かった。

旧暦の1月7日は、新暦だと2月3日だから、そろそろ春の七草も芽生えてきているはず。スマホ片手に、雪の合間からのぞく野草を探してみても、素人にはなかなか見つけられない。

その週末、我が子がこの世に生を受けた。2942グラム。女の子。

午後からお休みをいただき、出産に立ち会った。今まで、死に立ち会ったことは何度かあるが、誕生は初めて。事前に本やネットで予行演習をしてはいたけど、全然違う。
産むことも、産まれることも。
上手くいえないけど、ただただ感情があふれて、涙が止まらなかった。

今はまだミルクすらひとりで飲めない乳飲み子だけど、あっという間に大きくなって、自分の人生を歩みだす。そんな我が子に、はじめての、そして何より大切な贈り物。

名前。

名前って、その存在そのもの。一人ひとりに一つだけ。
人生は何度だってやり直せるけど、授かった命と名前は変えられない。
命は天からの授かりものなら、名前は我が子に贈る最初で最後のプレゼント。
親として、子にしてあげられることっていったいどれくらいあるんだろうか。そんなことを考えながら。

長年、百人一首に親しんできた妻が選んだ百人一首の一句

君がため 春の野に出でて 若菜摘む わが衣手に 雪はふりつつ /光孝天皇

大切な人の体を労わる優しい歌。

そんな優しい人に育ってほしい、
そんな温かい人に囲まれて生きて欲しい。
そんな願いをこめて、この歌から。

生まれてきてくれてありがとう。