京都にあと数件。ショッキングなこの数字は法要に欠かせない和ろうそく屋さんの数。
和ろうそくとは、ハゼの実や米ヌカから作った蝋をバームクーヘンのように一層ずつ塗り重ねて作る伝統工芸品。江戸時代には、街のあちこちにろうそく屋さんがあったようですが、安価な洋ろうそくが出回り、数えるほどになってしまいました。
いつも購入するのは、河原町松原にある小島商店さんで、創業は200年以上前。和ろうそくはあまり保存がきかないので、毎年、報恩講に用いる棒型の朱色の和ろうそくを注文しにいきます。最近では、寺院向けの洋ろうそくも出回っているようですが、昔から寺院と信仰を支えてもらった伝統技術がこれからも継承されていくよう、わずかですが必ず和ろうそくを使うようにしています。
ところで、いつも当たり前のようにお仏壇やお墓に供えるこのろうそく。いったい何のため?
ろうそくの灯りは、仏様の光、阿弥陀仏の智慧の光明(こうみょう)をあらわしています。
私達は誰しも、道理がわからない無知で愚かな心「愚痴の闇」から逃れられない存在です。しかし、自分ではそんな心の闇に気づくことができず、よって間違いを重ね、悩み苦しみます。智慧の光明は、そんな心の闇を照らし、無知で愚かなありのままの私を明らかにしてくれるのです。
ちなみに、この光明、どんなにすごい光かというと、清らかで何ものにも遮られることなく、衆生の怒りを除き喜びを与える。想いはかることすらできない優れた光で、古今東西をにあまねく照らすと、お経に書かれています。
和ろうそくは、洋ろうそくと比べて炎が大きく、ちらちらとゆらぎます。
薄暗い本堂のなかで、ひときわ大きくゆらぐ炎を、心静かに見つめてください。
あなたの心の闇を照らし、凝り固まった心を温かく溶かしてくれるかもしれません。