今、味わいたい心の歌。童謡「七つの子」

幼き頃に、母から聞いたあの童謡、友達と共に歌ったあの唱歌。日本には、心に響く歌がたくさんあります。耳に残る美しいメロディー。口ずさむ度に新たな発見が生まれる歌詞。日本人の心に染み込むあの歌を、今一度噛み締めてみませんか。

 

七つの子  作詞:野口雨情 作曲:本居長世

烏 なぜ啼くのの 烏は山に
可愛七つの 子があるからよ

可愛 可愛と 烏は啼くの
可愛 可愛と 啼くんだよ

山の古巣へ いって見てごらん
丸い眼をした いい子だよ

 

この詩は、誰もが一度は口ずさんだことのある曲ですが、何故、世代を越え歌い継がれているか?その魅力は何処にあるのか考えてみました。

「烏はなぜ啼くの・・・」と言う子供の素朴な質問に、側にいる母親が「山にたくさんのかわいい子供がいるから、かわいい、かわいいと啼くの」と答えています。更に、父親も「・・・啼くんだよ」と母親をフォローし、最後に「山も古巣へ・・・いい子だよ」と結んでいます。

この一見単純な詩の中に、夕焼けの空を啼きながらねぐらに帰る烏を、両親と一緒に眺め、会話を交わしている情景が浮かびます。それも、自然と共にゆったり暮らす暖かい家庭と、両親の愛情を一身に受け、夢一杯に育てられている子供の希望に満ちた笑顔までも瞼に浮かんで来ます。自然とのかかわり、親と子のあるべき姿を「烏」と言う身近な題材を通じて私達に教えています。

あくせく暮らす我々は、改めて味わいたい詩ではないでしょうか?

(住 職)


「七つの子」は、大正デモクラシーを背景に、大正10年7月(1921)、児童雑誌『金の船』に掲載された野口雨情の詩に、本居長世が、大正11年(1922)3月、作曲した名曲。このコンビによる童謡には、他に、「赤い靴」「青い眼の人形」「十五夜のお月さん」等がある。