お盆のお墓参りと五山送り火

先日、ある方から、「お盆になるとお寺は忙しいでしょう?」と聞かれましたので、「もちろん、お盆に門徒さん宅をお伺いすることはあるのですが、必ずしも、お盆でなくてもいいのです」とお話ししたところ、とても驚かれました。

真宗では、死後の世界も、霊の存在も否定しています。お盆にご先祖があの世からこの世に帰ってくることはありませんし、お墓や仏壇にも戻ってきてもおられません。だから、お盆だからといって、お参りをするわけではないのです。

では、どうして、霊もいないのに、お墓参りに行くのでしょうか。

それは、故人に思いを馳せ、故人の生前の姿を思い浮かべることで、今、生きている自分を振り返るためです。父母や祖父母、友人、、、さまざまなご縁に支えられて、今こうして生きていられることに深く感謝すると、自然と明日への生きる力が生まれてくるのではないでしょうか。

とは言っても、大切な人を失った悲しみから、とてもそれどころではないとお感じの方も大勢いらっしゃることだろうと思います。実際、私も、母を失ってから数年間は、五山の送り火を見るたびに、生前の母の姿を思い出しては意気消沈し、もし霊が存在するならば、もう一度母に会いたい、などと思った時もありました。

お盆の期間中、この世に戻ってきていた死者の霊をあの世へ送り届けるために灯すと伝わる「五山の送り火」。今年もさまざまな想いをのせて、温かく夜空を照らします。