2年前、娘の誕生を記念して植えた枝垂れ梅が今年もかわいらしい花を咲かせました。梅は、まだまだ肌寒い季節に、桃や桜に先がけて、一番に咲く花です。
梅は、日本古来の縁起物、吉祥「松竹梅」の一つ。もともと「松竹梅」とは、中国・文人画で好まれる画題のひとつ「歳寒三友」に由来するそうですが、日本伝来後、
松=常緑で不老長寿
竹=成長が早く強い生命力
梅=寒さに耐えて、一番に花咲く
ことから、それぞれ縁起物として扱われるようになったようです。
確かに、雪が降る中、松は緑を失わず、竹は空に向かって真っすぐ伸び、梅は上品な花を咲かせます。現代のような暖房器具もなかった時代、木枯らしが吹き込む家の中で、人々は寒さに耐えながら、暖かな春の訪れを心待ちにしていました。そんな願いが込められていることは言うまでもありません。
また、「梅花開五福」(梅花、五福を開く)という禅語があります。掛け軸などでお見掛けになった方もおられるのではないでしょうか。五福とは、梅の花の5枚の花弁になぞって、
「長寿」、「人徳」、「裕福」、「健康」、「天命」を指しており、寒い中、努力を重ねることで、心の中にある梅の花が咲き、悟りが開けることを意味しているそうです。
ところで、多くの植物は、春に芽生え夏や秋に花を咲かせ、種として冬を越えます。これは、命を脅かす寒さを乗り越えるための生物の知恵です。しかし、梅や桜は、大切な花の芽を寒さから守り、冬を越えたタイミングで花を咲かせます。このメカニズムは、とても神秘的です。少し調べてみると、複数の化学物質で芽を固くして寒さから守り、一定時間、低温に曝されると、目覚めて開花するそうです。秋には既に、花の芽はほぼ完成しているそうで、それからは春が来るまで、寒さに耐えつつ休眠しているそうです。
「果報は寝て待て」ということわざがありますが、万全の準備をして、春は寝て待つ(笑)。いくら努力をしても、すんなりと思い通りに進むことはそうそうありません。しかし、寒い日がずっと続くこともありません。自分ではどうしようもない、そんなありのままを素直に受け入れ、じっと待つことも、時には必要なことです。
薄紅色の枝垂れ桜を前に、寒く辛い時も、暖かく幸せな時も、そのありのままを受け入れ、豊かな人生を歩んでいけるよう、娘の健やかな成長を祈るとともに、私もいつか美しい花を咲かせることができるよう気持ちを新たに毎日を過ごしていきたいと思います。