お寺のしくみ①「組織体制」-住職と代表役員-

学生の皆さんは、長い夏休みを終えて二学期のはじまりですね。私の職場にも夏季休暇の制度があるので、まとまったお休みを活用して、自坊の宿題に取り組むことにしています。一昨年は門信徒台帳。去年はwebサイト・リニューアル。そして、今年は、自坊の立て直し。といっても、これは数年がかりの大仕事なので、まずは財務・会計、法務の勉強から。ところが、数冊本を読んだだけなのに、知らないことばかりでびっくり!!

例えば、お寺の意思決定方法。お寺の決算書。お寺の税金。僧侶の給与制度。・・・

昔は、粛々とお参りをしていれば僧侶の役目がそれなりに果たせていたのかもしれませんが、門信徒さんや市民・住民との関係が薄れてきた今、お寺のしくみや実情を積極的に開示して理解をすすめ、新たな関わり方を探っていくことが必要な気がします。

そこで、今回は、お寺をはじめとする宗教法人の組織体制について少しご紹介したいと思います。例えば、お寺の”えらい人”の呼び名、「住職」や「門主」「管長」「座主」「貫主」「別当」・・。どうしてこんなにたくさんあるのでしょうか。

お寺は、宗教法人法という法律によって、法人格を与えられると同時に、機関設計についても規定されています。具体的には、お寺には宗教法人という法人格があるため、商法における株式会社と同じように、法人として財産を保有したり、契約の主体となったりすることができます。また、3名以上の責任役員が合議で最高意思決定を行い、代表役員が執行責任者として業務を遂行します。いわば、株式会社における取締役会と代表取締役に似たような機関となっています。

しかし、株式会社と大きく異なるのは、株主総会にあたる機関がないことです。株式会社の場合、出資者による株主総会が最高意思決定機関として取締役を選任しますが、宗教法人の場合には、株主総会に相当する機関はありません。場合によっては、門信徒が株主に近い存在とも考えられなくもないですが、政教分離の原則もあり門信徒の定義は各法人によってまちまちのため、宗教法人法上には規定されていません。株主(のような存在)がいないことで、代表役員の子どもが代表役員を承継しやすいと同時に、第三者が承継することも比較的容易と言えます。

一方で、よく聞く「住職」や「門主」、「総代」といった呼称は、宗教法人法ではなく、各寺院が独自に定める「寺院規則」に基づくもの。宗教面における立場や役目を表すもので、設置の有無やその意味あい、権限等は、各寺院が実情にあわせて定めるため、「住職」や「門主」「輪番」「管主」「座主」などお寺によってさまざな呼称があります。また、そのため、宗教法人として最終決定を行うのは「住職」や「門主」ではなく「代表役員」ということなります。(ふたつの役割を兼務をしているお寺もたくさんあります)

当院について言えば、宗教法人長性院に三人の責任役員を置き、住職が代表役員を兼務しています。また、門信徒の方にも責任役員になっていただくことで、寺院と門信徒が一丸となって寺院を支える体制となっています。

馴染みがないため難しいかもしれませんが、お寺の組織体制について、少しはご理解いただけましたでしょうか。いまは、日本公認会計士協会の宗教法人会計規則をテキストに、寺院の会計について勉強中。中小企業診断士として、多少は会計についても勉強してきたつもりですが、営利法人との違いに悪戦苦闘しています。そんな「お寺の会計」のお話はまたの機会に。

(副住職)